【M&Aの初めの一歩】専門家への初期相談、準備すべき5つのこと|有意義な面談にするための完全ガイド
はじめに:M&Aの初期相談は「お見合い」。良い準備が良いご縁を生む
会社の未来を考え、M&Aという選択肢が頭に浮かんだ時、次なるステップは専門家への相談です。しかし、この「最初の一歩」を前に、「何を話せばいいのだろう」「まだ何も決まっていないのに、相手にされるだろうか」と、足がすくんでしまう経営者の方は少なくありません。
M&Aの専門家との初期相談は、人生のパートナーを探す「お見合い」のようなものだと考えてみてください。
完璧な経歴書や、美辞麗句を並べた自己紹介は必要ありません。大切なのは、これまでの歩みを誠実に伝え、そして、これからどんな未来を築きたいかという「想い」を語ることです。良い準備をして臨むお見合いが良いご縁に繋がるように、M&Aの初期相談も、少しの準備でその後の成果が大きく変わってきます。
この記事では、M&Aという未知の領域へ、勇気ある一歩を踏み出そうとしているあなたのために、専門家との「最初のお見合い」を有意義なものにするための完全ガイドをお届けします。
相談前の心構え:「まだ漠然と…」でも全く問題ありません
まず、最もお伝えしたいこと。それは、M&Aについて「まだ漠然と考えている」という段階でも、相談して全く問題ないということです。
M&Aの専門家は、整理されていない想いを紐解くプロフェッショナル
「後継者がいない」「業界の先行きが不安だ」「アーリーリタイアも考えたい」。経営者の皆様の想いは、複雑に絡み合っているのが当然です。私たちM&Aの専門家は、その整理されていない想いを丁寧に紐解き、M&Aが本当に最善の選択肢なのかを、客観的な視点から一緒に考えるプロフェッショナルです。考えがまとまっていなくても、どうぞご安心ください。
信頼できる専門家なら、無理に売却を勧めることは絶対にない
「相談したら、強引に契約させられるのではないか」というご不安もあるかもしれません。しかし、真にクライアントの利益を考える誠実な専門家であれば、あなたの意思を無視して無理にM&Aを勧めることは絶対にありません。むしろ、M&A以外の選択肢(例えば親族外の役員承継など)も含めて、最善の道を提示してくれるはずです。
相談は無料。まずは自社の健康診断を受けるつもりで
多くのM&A仲介会社では、初期相談は無料です。まずは、自社の経営状態について、専門家による「健康診断」を受けるつもりで、気軽に門を叩いてみてください。客観的な意見を聞くだけでも、大きな収穫があるはずです。
【これだけは準備!】初期相談に持っていくべき「3つの資料」
「手ぶらで行くのは気が引ける…」という方のために、これだけあれば話がスムーズに進む、という3つの基本資料をご紹介します。
資料①:会社の概要がわかるもの(パンフレット、Webサイトなど)
専門家が、あなたの会社が「どのような事業を行っているか」を、短時間で理解するための資料です。立派なものである必要はありません。会社のパンフレットや、自社のWebサイトを印刷したもので十分です。
資料②:決算書・確定申告書(可能であれば直近3期分がベスト)
これは、会社の「健康診断書(カルテ)」です。売上や利益の推移、資産や負債の状況など、会社の経営状態を客観的に把握するために不可欠です。可能であれば、直近3期分の決算書と法人税の確定申告書をご用意いただけると、より具体的で精度の高いアドバイスが可能になります。
資料③:株主名簿
会社の所有者が誰であるかを示す、非常に重要な書類です。特に、株主が複数いる場合は、M&Aを進める上でキーパーソンとなる株主を把握するために必要となります。
資料以上に重要!頭の中を整理しておくべき「2つのこと」
完璧な資料を揃えること以上に大切なのが、経営者であるあなた自身の「想い」を整理しておくことです。
思考の整理①:M&Aを考え始めた「きっかけ・目的」は何か?
専門家が最も知りたいのは、「なぜ、あなたがM&Aを考え始めたのか」という動機です。うまく話せなくても構いません。箇条書きでメモをしておくだけでも十分です。
- 後継者がおらず、このままでは廃業するしかないと考えている。
- 社長である自身の健康に不安が出てきた。
- 業界の先行きが不透明で、体力のあるうちに会社を譲渡したい。
- 創業者利益を得て、アーリーリタイアし、第二の人生を楽しみたい。
思考の整理②:M&Aで「実現したいこと・譲れない条件」は何か?
もしM&Aをするとしたら、何を一番大切にしたいですか?これも、あなたのM&Aの軸となる重要な要素です。
- 長年連れ添った従業員の雇用だけは、絶対に守ってほしい。
- 先代から受け継いだ、この会社名は残したい。
- 最低でも〇億円での売却を実現したい。
- 引退後も、顧問として会社に少し関わり続けたい。
初期相談で、専門家から価値ある情報を引き出す「質問リスト」
相談は、あなたが専門家を「見極める」場でもあります。以下の質問を投げかけて、有意義な情報を引き出しましょう。
- 私の会社を客観的に見て、どのような「強み」と「課題」があると感じますか?
- 現時点で、おおよその企業価値(売却価格)は、どのようなロジックで、いくらくらいになりそうでしょうか?
- 私の会社の場合、どのような企業が「買い手候補」として想定されますか?
- もしM&Aを進める場合、どのようなプロセスで、おおよそどれくらいの期間がかかりますか?
- 御社の料金体系(着手金や成功報酬など)について、具体的に教えてください。
これらの質問に対する答えの明快さ、論理の的確さ、そして誠実さから、その専門家が信頼に足るパートナーかどうかが透けて見えてきます。
有意義な相談にするための当日の心構え
会社の課題や弱みも、包み隠さず正直に話す
専門家は医者のようなものです。良い部分だけでなく、課題や弱み、懸念事項も正直に話すことで、より正確な「診断」が可能になります。問題を隠しても、いずれデューデリジェンスなどで明らかになります。最初からオープンに話す姿勢が、信頼関係の第一歩です。
専門家の実績だけでなく、「人としての相性」をしっかりと見極める
M&Aは、半年から1年以上に及ぶ長い旅です。その旅を共にするパートナーとして、実績や会社の規模はもちろん重要ですが、最終的には「この人になら、何でも話せる」「この人と一緒に戦いたい」と思えるかどうか、人としての相性が極めて重要になります。
まとめ:勇気ある一歩が、未来を拓く
M&Aの専門家への初期相談は、決して難しいものでも、怖いものでもありません。それは、あなたの会社の未来の可能性を広げるための、希望に満ちた「最初の一歩」です。
完璧な準備は必要ありません。あなたの会社の現状を示す少しの資料と、「会社を、従業員を、そして自分自身の人生を、より良くしたい」という誠実な想い。それさえあれば、専門家との対話は、必ずやあなたの未来を拓く有意義な時間となるはずです。
その勇気ある一歩を踏み出すあなたを、私たちは心から応援しています。